2013年1月7日月曜日

サバティカル日記5  1月7日 10時50分 コルドバにて

1月7日 10時50分 コルドバにて

こちらは朝が遅いので、この時間でも完全に朝の気分。早朝はまるっきり活気がない。朝6時くらいになると活気に満ちるインドネシアが懐かしい。
それにしても寒い。寒いけれど、今、入っているカフェには暖房がないのでは?と思えるくらいの温もり。客は、暖かさよりも、寒さの中で震えもせず寒さに身を浸して楽しんでいるかの如くである。外よりは息が白くならないだけマシか。それでもこちらの人たちは半袖でいたりするので、温度の感じ方が違うとしか言いようがない。それにしても寒い。けれど外でも息を白くしてサングラスを掛けながら珈琲を飲む人たちも結構いる。なぜ?

昨夜、コルドバのタブラオ(フラメンコダンスを行うところ)に行ってきた。ここは20万人程度の小さな街なのでまったく期待せず、所詮、観光客向けの踊りだろうと思っていた。一応、来たから、行ってみたというに過ぎない。ところがこれがまったく裏切ってくれた。凄かった。観光客と言っても、ほぼスペイン人。要するに地元スペインの人間に見せるフラメンコなんだから中途半端なことはできないってことなのだろう。僕も何回かは日本でフラメンコを見ている。しかし、そのレベルを遙かに超えた本気度があって、輝いていた。踊り手も歌い手もギタリストも、まるで手を抜いていない。観光客向けの手抜きの様はいろいろなところで見せられてきたが、この人たちからは強い誇りを感じて、嬉しくなった。

フラメンコダンスをどう捉えればいいか。僕はアラブの音楽こそが世界で最も旋律の美しい音楽だと思っているけれど、スペインはイスラム帝国の一部であって、その影響が濃厚に滲み出た音楽がスペイン音楽である。今、スペイン音楽やトルコ音楽はアラブ音楽には分類されないが、アラブ的であることは間違いない。このアラブにロマが入り込んで強烈なリズムと妖艶さ、激しさが生み出されたのだろう。特にここアンダルシア地方ではアラブが濃厚に入ってくる。踊りにしてもアラブとヨーロッパとロマの融合なのだが、アラブとロマ色が強い。だから強烈に惹かれる。(アンダルシアと書いただけで「アンダルシアの犬」の映像が頭を過ぎってしまう。いかに人間が視覚的生き物であるか。)

今回のスペイン、モロッコ、マリ、セネガル、イスラエルは音楽の旅だとは前に書いた。だからこそ、実はモロッコと共にアルジェリア、チュニジア、リビアにも足を踏み入れたかった。それはアラブマグレブと言われる地帯で、アラブアンダルース音楽を堪能しようという旅でもある。ただ、これを計画した段階(つまりセゾン文化財団に申請書を提出した1年3カ月前の時点)では、まだアラブの春による、政情不安が語られていたため避けたのだった。しかし、特にアルジェリアには行ってみたい。
とは言え、アルジェリアは危険地帯だ。危険度は真っ赤っか。ならば果たしてマリは大丈夫なのか? 情報は入って来ないが、北部は完全にイスラム原理主義組織に制圧されている。外務省の渡航情報を見るとこれまた真っ赤っか。ウウム。この前、在日マリ大使館のスタッフ(日本人)は大丈夫と言っていたんだけど・・・。

 今、カフェで掛かっている音楽のなんとまあアラブ的濃厚さが滲み出ていることか。タブラのような音が鳴って、永遠に続くかと思えるような朗唱の歌がうねうねと続いている。この感覚なのだ。そしてこれは街の感じともそっくりである。ここコルドバのユダヤ人地区を歩いてみると、やはり迷宮感覚に陥る。それはトレドでもそうだったが、さらにモロッコのフェズあたりにはいると、この迷宮感覚はピークに達するのだろう。
 コルドバでさえ、音を聴いて高鳴っている。ならばアラブマグレブのモロッコに入ったらどうなるのだろう。マラケシュ、フェズ、そして砂漠の旅。モロッコの楽しみをこの音に託しておこう。うねる音楽。うねるからだ。うねる呼吸。うねる心臓音。

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